【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「そんなことがあったからさ、またああやって転校とかしたくないって思ってて……だから、香月にあの方法を試したんだ」

「あの、方法?」

 試したって、何かされたっけ?

 分からないけれど、確実に後悔しているような忍野君の様子に不安だけは募る。


「高校で香月に会ったとき、すぐに吸血鬼が好む血を持ってる人間だって分かった。吸血鬼の“花嫁”になりえる人間がいるってことだけは知ってたから、多分香月がそうなんだろうって」

 そして転校したくなかった忍野君は、自分たちが使う人間に成りすます方法を私に試したそうだ。

「そうしたら、“花嫁”の気配も消えたから安心した。あとは定期的にその方法を使って、高校生の内は乗り切れるだろうって思ってた」

 そこで「でも……」と呟き愛良をチラリと見る。

 すぐに外された視線は床に落とされた。


「少ししてから香月の妹を見て、こっちが本当の“花嫁”だって分かった。だから、香月にその方法を使うのを止めたんだけど……」

 その続きの言葉はなかなか出てこなかった。

 凄く、躊躇っている。


 でも話してもらわないと困る。

 私は促す意味を込めて「忍野君?」と呼びかけた。


 ビクッと体を震わせた忍野君は、恐る恐る私を見てから口を開く。

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