【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 でもそうなったら、愛良を一人でこの学園に行かせることになっていたんだろう。

 今までの事件を思うと、それは避けたい事態だった。


 だから……。


「こういう事だったんだ。ごめんな、香月」

 謝ってきた忍野君に、私は笑顔を返す。

「いいよ。勝手に何かされたってのはちょっと嫌だけど、忍野君がそうしてくれなかったら愛良を一人でこの学園に行かせることになってたと思うから……」

 結果論だけど、許せないと思うほどのことではなかったから……。


「それよりも気になるんだけれど、結局私に何をしたの? その方法って何?」

 許してもらえるとは思わなかったのか、戸惑いの表情で瞬きをする忍野君。

 私の質問に答えるまでに少し間が開いてしまった。


「あ、ああ。ほら、俺皆に飴配ってたじゃんか」

「ああ、“飴屋”なんて言われてたくらいだもんね」

「そうやって皆にも配って誤魔化してたんだ。香月にやってたのって、大体べっ甲飴だっただろ? あれ、俺が作ったやつなんだ」

「……は」


 飴?

 あの飴?

 あれが原因だったの⁉


 まさかあのべっ甲飴だけは私限定だったなんて思ってもいなかったから、衝撃を受けた。


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