【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そのことを知ったショックから抜け出せない私は、急に話を戻すと言われても何を話していたのかすぐには思い出せない。


「とにかく忍野はそう言った事情のため、責任を取るために婚約者候補に入ることになったんだ」

 田神先生の言葉に、そんなショックはどうでも良いことだったことに気付く。


 そうだよ、私の婚約者候補のことだよ!


 もうどうしようもないことでショックを受けている場合じゃない。

 責任を取るって、私を“花嫁”にしてしまった責任ってこと?


「もちろん選ぶのは聖良だ。だが、聖良を“花嫁”としてしまった責任として守るのは当然のことだろう」

 というか、守らせる以上のことはさせるつもりはないが……という呟きも聞こえたけれど、それは今はどうでも良い。


「いや、私別にそのことには怒ってないし……責任なんて取ってもらわなくても良いんだけど……」

 忍野君が岸に腹を蹴られたシーンが頭の中に蘇る。

 あんな風にわたしを守ることで痛い思いをさせたいわけじゃない。

「だから、無理に婚約者候補にならなくても……」

 そう言い募る私に、忍野君は「いや!」と大きめな声を上げた。


「良いんだよ香月。って言うか、俺がそうなりたいんだ」

「え?」

 どういう事だろう?


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