【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
先日、やっと計画を実行に移すチャンスが来た。
月原家が地道に続けていた下準備が実を結ぶ形で。
その下準備のおかげで途中まではうまく行っていたんだ。
シェリー達も“花嫁”を手に入れられたし、俺も聖良を手に入れた。
かぶりつきたいと思っていた唇も味わえたし、弱いところも知って味見程度に攻め立ててみたし……。
もっと、味わいたかった。
場所なんて関係なく、あいつのすべてを奪いたかった。
思い出すだけで、俺の中にマグマのような熱が巡る。
怖がって震えるさまも可愛かったが、本来の気の強さを出して睨む表情にもゾクリとした。
聖良というただ一人の女が、欲しくて欲しくてたまらない。
邪魔さえ入らなければ、きっと今頃は俺の腕の中でドロドロに溶かしてやっていたのに……。
「聖良……」
「……ホント、かなり執着してるのね」
求めた女の名前をつい呟くと、庭の暗がりから求めた女とは違う人物が現れた。
シェリー。
月原家の裏の仕事をしている女。
俺の協力者。
「……なんだよ。こんな夜中に何の用だ?」
気配で近くに来ていることは分かったが、話しかけてくるとは思わなかった。
今までもこの別邸周辺で吸血鬼の気配を感じることはあったが、監視目的なのか接触してこようとはしてこなかったから。