【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 結局のところ、完全に信用されてるわけじゃ無いって事だ。


 ……まあ、良いけどな。
 俺も利用させてもらってるだけだし。


「素っ気無いわね。血液パック持って来てあげたっていうのに」

 少しムッとした様子で上げた手には、言葉の通り血液パックが一つあった。

「あの“花嫁”もどきの血は飲まなかったんでしょう? ならそろそろ飲んでおかないと辛くなってくるんじゃない?」

「だからお前な、聖良のことを下に見るような言い方すんじゃねぇよ。あいつは俺の――」

「あーはいはい。分かったからさっさと受け取ってちょうだい」

 聖良を“もどき”なんて言い方をしたシェリーに不満を告げようとするも、テキトーに流されて血液パックを軽く放られた。


「ッチ」

 舌打ちを返しつつもそれを受け取った俺は、見慣れた血液パックを無言で見る。
 ハンター協会から支給されている血液パックだ。

 吸血鬼が人間を襲わないように、ハンター達は献血という形で吸血鬼達に血を支給する。
 これも、百数十年前に吸血鬼とハンター協会で取り決められたルールの一つだ。

 血液パックはハンター協会で厳重に管理されているが、そういった理由から特定のルートを使えば匿名でも申請して手元に届くようになっている。

 だから、一応追われる身である俺にも支給されるってわけだ。


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