【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 “花嫁”だからなのかもしれないが、でも“花嫁”の血を飲んだからといって他の血が飲めなくなるなんてことは聞いたこともない。


 血液パックを見つめてもう一度試しに飲んでみるか? と考え顔をしかめる。

 いくら飲まなきゃ体力が落ち死に近付いてしまうと分かっていても、このマズさは遠慮したい。

 そうしていると、シェリーがふと何かに気付いた。


「……もしかして、あの子はあなたの“唯一”なんじゃないかしら?」

「は?」

「“唯一”の血を飲んだ吸血鬼は、たまに他の血を受け付けなくなる者もいるらしいから」

 私は大丈夫だったけれど、と口にするシェリー。

 そういえばこの女には“唯一”がいるんだったな。


 “唯一”とは文字通り一人の吸血鬼にとっての唯一無二の存在だ。

 ただ、見つけられるかは運次第。

 奇跡に等しい確率なため、ほとんどの吸血鬼が出会うことはない。

 そんな奇跡でも起こらなければ出会うこともないはずの俺の“唯一”が――聖良?
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