【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……」

 有り得ない、とは言わない。

 ある意味、渇望するほどに求めるこの想いは確かに聖良が俺にとっての“唯一”だからなのかもしれない。


「そうかもな……」

 そう呟いた俺は口元に残った血を袖でぬぐい、月を見上げた。


 手を伸ばして焦がれて求めても、この手に自ら落ちて来てはくれない。

 求めても、求め返してはくれない。

 今の聖良との関係性は、そんな月と同じように思えた。


 でも、別にそれでいい。

 求めてもらえないのが分かっているんだ。

 それなら俺は躊躇いもなく略奪者でいられる。


 焦がれて、求めて――奪う者。

 それが俺なんだ。


「待ってろ聖良ぁ……。次こそはお前のすべてを奪いつくしてやるからなぁ」

 半分になった月を見上げ、俺は求める女を思った。
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