【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それ以前の問題だから、ドキドキするのが照れているだけなのか、ちょっとは気があってそうなっているかの判断がつかない。

 彼等や周囲の様子から、早く相手を決めろというようなプレッシャーを感じるのも、判断を鈍らせてる原因だと思う。


「はぁ……」

 思わずため息をついた。

 ちょっと、ストレスになってるかもしれない。


 一度婚約者とか恋愛とかから離れて自分の気持ちと向き合った方が良いかも。


 そんな風に思いながら、学園祭は過ぎて行った。

***

 深く、深く深呼吸をする。

 神経を研ぎ澄ませて、握った拳に力を込める。

 そして短く吐いた息とともに拳を前に突き付けた。


「せい!」

「うん、まあまあだな。でも(りき)み過ぎだ。少し力を抜け」

「はい!」


 学園祭も終えると、私は岸対策のために空手を教わっていた。


 岸――私に執着してるド変態。

 唯一、私が血を吸われた吸血鬼。

 あいつは捕まっていない以上また私の前に現れるだろう。

 そのときは――。


 絶対あの顔面殴ってやるんだから!


「はっ!」

「だから力み過ぎだ。愛良を見習え、姉なのに妹に負けてどうする」

「うっ……すみません」


 岸のことを考えるとどうしても怒りが前面に出て力が入ってしまう。

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