【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 私はゆっくり呼吸を整えながら愛良の方を見た。


 愛良はちゃんと教わった通り姿勢をキレイに保っている。

 こんな風にしなきゃだめだよね、と見本代わりにした。


 私が格闘技を習うと言ったら、愛良もやりたいと手を挙げた。

 少し驚いたけれど、確かに本物の“花嫁”である愛良の方が危険な目に遭いやすい。

 だから一緒に頑張ろう! ということで今に至る。

 愛良は婚約者を決めたとは言え、まだ決めただけだ。

 何か、その婚約者と契約をすれば狙われることはなくなると聞いたけれど、詳細はまだ聞いていない。

 田神先生はある程度準備が終わったら説明すると言っていたけれど……。


 私は室内の壁際にいる人物に目を向ける。


 そこには金魚のふん状態の零士がいた。

 前から愛良の金魚のふんだったけれど、愛良の婚約者と正式に決まってからは拍車がかかった。

 寮の部屋にいるときや授業があるとき以外は常に一緒にいるんじゃないだろうか?


 少し呆れ気味に零士を見ていると、相手も視線に気づいたのかこちらを見た。

 目が合うと、明らかに馬鹿にした目をして鼻で笑う。


『はっ、姉のくせに愛良より筋が悪いとか。意気込んでるから尚更カッコ悪いな?』

 そんな幻聴すら聞こえた。

 ついでに言うと。


『やっぱり俺の愛良はすげぇよな』

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