【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 私の“花嫁”の気配を隠そうとして、自分の血を使って作った飴を知らずに食べさせられていたって話。


 もうどうしようもないから仕方ないと割り切っているけれど、そんなものを食べさせられたってこと自体にはまだちょっと恨んでいたりする。


 本来の血とは成分が全く別物になっていると言う忍野君の飴ですら嫌だと思ったのに、ほぼお互いの血だろうっていう石を飲み込むとか……。


 ないわ……。


 正直ドン引きしていると、田神先生に「最後まで聞きなさい」と叱られてしまった。


「それを愛良さんが飲み込むのが本来の形だけれど、そんなことをする吸血鬼は今どきいないから、その石を装飾品に加工して身に着けておけばいい。そう言いたかったんだ」

「あ……ごめんなさい」

 私の早とちりだったことに気づいて縮こまる。


「え? でも身に着けるだけで良いんですか? その装飾品を奪われたりしちゃったら困りませんか?」

 何も言えなくなった私に代わり、愛良は素朴な――でも当然の疑問を口にする。

「それは大丈夫だ。外れないから」

「え?」
「は?」

 まさかの答えに私と愛良は一文字で聞き返す。


「大体がブレスレットにするんだけどね。継ぎ目のない状態でピッタリ手首に着けるから、外せないんだ」


 ああ、物理的に外れないってことか。


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