【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「え?」

 儀式のことを把握するので手いっぱいだった私達に、田神先生は厳しいほどの真剣さでそう言った。


「儀式をしてしまえば、君の血は零士にしか力を与えられないようになる。それくらい強いつながりが出来るんだ」

「……はい」

「そして、逆を言えば儀式をする前なら手が出せるってことだ」

「あ!」

 思わず声を上げたのは私。


 そうか、愛良を狙う吸血鬼にとっては儀式の前が最後のチャンスってことになるんだ。

 少し前にあれだけ手の込んだことをしてくれた人達。

 そんな人達が簡単に諦めるとは思えない。


「分かったかな? つまり、儀式前の今が一番狙われやすく危険だということだ」

 言葉にされて、身が引き締まる。

 部屋の中全体が緊張感に包まれた。

「そのため、儀式が終わるまでは厳戒態勢を敷くことになる」

 そう宣言した田神先生は、続けて具体的にはどうするのかを話した。


 明日からは愛良には護衛を三人以上はつけることになる。

 最近はH生の方にも信頼出来そうな人達が多くなってきたから、そっちの方にも協力を頼んでみることにしたらしい。


「寮と学校以外の外出も制限させてもらうけれど、ひと月の辛抱だからそこは我慢してほしい」

「はい、分かってます」

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