【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 申し訳なさそうな田神先生に、愛良は聞き分けよく大丈夫だと言った。

 そして零士の方を見る。


「零士先輩と共にあれるなら、それくらいの不便どうってことないです」

 零士以外には見せないであろう優しい笑顔。

 愛良は本当に零士が好きなんだなって思える笑顔。


 そんな笑顔を浮かべるようになった愛良を純粋にすごいなって思う反面、やっぱり少し寂しかった。

 ずっと守ってきた妹が遠いところに行ってしまったような感覚になるから。


 だからそんな愛良から視線をそらした。

 すると嘉輪と目が合う。

 嘉輪は私の心情を悟ってか、しかたないなぁって感じの困り笑顔を浮かべていた。

 だから私も似たような笑顔を返したんだ。

 愛良の答えに「そうか、ありがとう」と返した田神先生は、次に私を見る。


「このひと月はどうしたって愛良さんに守りが集中してしまう。でも聖良、君も危険だってことは忘れないで欲しい」

 呼び捨てにされたことで、今の言葉が先生として出た言葉じゃないって分かった。


「岸はまだ君を狙っているんだ。手薄になった隙を狙ってくるに決まってる」

 それはそうだろうな、と思ったからコクリと頷く。

「つきっきりで守りたいが、いくらなんでもそれは出来ないからな……。自分でも充分に警戒してくれ」

< 369 / 741 >

この作品をシェア

pagetop