【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 嘉輪の代わりに今日の私の護衛をしてくれている正樹君が声をかける。

 あまり離れたところにはいかないで欲しいってことだろう。


「心配するな。出てすぐのところにいる」

「そうですか。分かりました」

 そうして正輝君も納得したので、私はそのまま鬼塚先輩について外に出た。


 外は曇り空で少し湿気もあった。

 もう少ししたら雨が降るかもしれない。


「ちょっと座れ」

 出てすぐの石段になっている場所に促されて座ると、鬼塚先輩も隣に腰を下ろした。

「悩み事があるならとりあえず吐き出せ。ため込んでいると嫌なものばかり積み重なっていくぞ?」

 前振りも何もなく、単刀直入に本題を話し出す。

 空手一筋って感じの鬼塚先輩らしいと言えばらしいけど。


 でもデートが憂鬱とか、言って良いものなのか……。


 関係のない鬼塚先輩に言う事じゃないし、何より私の事を好きでいてくれてるみんなに悪い気がした。

「言え。別に言いふらしたりなんてしないから、とにかく言葉にして出してしまえ」

「っ……」

 この後におよんでためらう私に、鬼塚先輩は命令口調で言う。


 そこまでして言われたら口に出さないわけにもいかなかった。

 鬼塚先輩も私のことを心配して言ってくれているんだろうから。


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