【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……みんなに好きだって言ってもらえるのは光栄なことだけど、私はそれに応えられないから辛いんです」

 一度言葉にしてしまうと、後は(せき)を切ったようにあふれ出してきた。


「誰を好きになるか、私自身にだって分からないのにみんなはどんどんアプローチしてくるし。それでいて早く決めて欲しいはずなのに無理に早く決めなくていいって感じだし」

「……」

「でもやっぱり揃って男として見てくれって迫ってくるし!」

 口に出しているとどんどん怒りが湧いてきた。

「大体みんな私の話聞かないし! デートだってちゃんとOKしたわけじゃないのに決まっちゃうし!」

 そうだよ。

 そう言えば私まずデート自体するなんて一言も言ってないし。

 なのに勝手に決めちゃって!


 憂鬱でため息ばかりついていたはずなのに、よくよく考えると怒りしか湧いてこなかった。


「……くはっ、やっとお前らしくなったな」

「っ!」

 ヒートアップしてきてつい鬼塚先輩の存在を忘れるところだった。

 笑われて、ハッとする。


「……今の忘れてください……」

 普通に恥ずかしかった。


「まあ、少しは発散出来たみたいで良かったよ。……だが、このままだといつまでも解決しなさそうな問題だな?」

「うっ……」

 その通りだった。


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