【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 田神先生達とのデートの後ならどこをどう見て回ればいいのかなどマニュアルが作れるだとか、それによって吸血鬼側や学園側から許可が取りやすいだとか。


 つまるところ、私は護衛対象として実験台にされるようなものみたいだった。

 それもどうなんだろうと思ったけれど、H生にとっては必要なことなんだろうなと納得させた。


「まあ、気負う必要はない。俺とのデートは他の奴らとのデートでたまったうっぷんとかを晴らすために遊びに行くって感覚で良いと思うぞ?」


「うっぷんって……ふふっ」

 その言い方は皆に失礼だと思わなくもなかったけれど、ある意味あっていたのでつい笑ってしまう。


「やっと笑ったな」

「え?」

「気が強いからムスッとしてることも多いけど、お前は笑ってる方が可愛いよ」

 と、優し気に微笑まれた。


 その笑顔と不意打ちの『可愛い』に少しドキッとする。


 眼差しが田神先生や俊君達と被って見えて、まさかね、と思う。

 まさか鬼塚先輩まで私のこと好きとかないよね。

 鬼塚先輩は多分教え子でもある私に親身になってくれてるだけ。


 好きかも、とか。
 流石に自意識過剰だよね?


「というわけで、最後には俺とデートな」

「は、はぁ……」


 ……あれ?

 鬼塚先輩とデートすることも決まっちゃったの?

 ちょっと待って、最近の婚約者候補の人達への愚痴を聞いてもらうだけだったはずなのにどうしてこうなった?


「えっと、私はどうすれば……」

 ついていけなくて何をすればいいのかも分からない。

 そんな私に鬼塚先輩は心配するなと言う。


「お前は何も気負う必要はないんだよ。ただ、自分の心のままに行動すればいい」

 そう言われて、本当にそれで良いのかなぁと思いつつ、どうすることも出来ないのでその言葉に頷いた。
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