【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それでも念のためって感じだったけれど、護衛付きならいいかなと言ってもらえた。

 おかげで今日は少し気分が向上している。

 まあ、それでも憂鬱な気分は完全に晴れるわけじゃないからため息はつくし心配もされちゃうんだけどね。


「……まあ、色々思うところはあるけど今は温泉! 今週の週替わり風呂はリンゴって聞いたから楽しみなんだよね!」

 ちょっと無理やりな感じはあるけれど、今は純粋に温泉を楽しもうと思った。



 そうして以前と同じように胸の大きさを瑠希ちゃんにうらやましがられながら温泉に入る。

 楽しみにしていたリンゴ風呂に嘉輪と浸かっていた。


「はぁ~……香りもいいし、癒される……」

「ふふっ、聖良って本当に温泉好きよね」

「だって気持ちいいじゃん~」

 もはやとろけそうな気分で受け答えしていた。


「……」

 しばらく無言で温泉を堪能(たんのう)していると、嘉輪にジッと見られていることに気づいた。

「ん? 何?」

「え? あ、いや……なんでも」

 目をそらされていぶかしむ。


「気になるでしょう? 言ってよ」

「いや、多分聞かない方が良いと思うよ?」

 さらに目をそらされる。


 このとき嘉輪の言う通り聞かなければ良かったのかもしれない。

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