【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 でもあたしは久々の温泉で気分が良かったこともあって、つい聞いてしまった。


「いいから言ってよ」

「えー……」

 嘉輪はまだ渋ったけれど、あたしが重ねて聞くものだから渋々答えてくれた。

「……首」

「ん?」

「首のキスマーク、消えて良かったなって思ってただけ」

「⁉」


 首のキスマークといったらあれしかない。

 というか、あたしにキスマークなんてつけたのはあいつしかいない。


 岸がつけた、執着の証。


「な、な、な」

 嘉輪には見られていなかったはずなのに何で知ってるの? と聞きたいのに初めの“な”の文字しか口から出てこない。


「ごめんね? 正輝から聞いてたの。また男の人怖くなったらどうしようとか思ってたけど、怒りの方にシフトしているみたいだからまだ良かったなーって」

「っ~~~!」

 もはや言葉が出てこない。

 聞かなきゃ良かったと後悔しても遅い。
 聞いてしまったからにはどうしたって思い出す。


 岸の執着の痕も消えて思い出すことはほとんどなくなったはずの記憶。

 あのキスマークをつけられていたときの溶けていく思考。
 湧き上がってくる得体の知れない熱。

 それらが瞬時に思い出されて……。


「ちょっと聖良? 大丈夫? 顔すごい真っ赤よ?」

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