【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 掛けた声に気づいた彼は、私の姿を見てふわりと笑った。

「っ⁉」

 とても嬉しそうな表情にドキリとしてしまう。


「聖良先輩、来てくれてありがとうございます」

 そうお礼から始まった浪岡君は、嘉輪と護衛を引き継ぐような会話をする。


「じゃあ楽しんできてね」

 嘉輪は一応この近くには待機してくれるらしい。
 でも、デートという名目がある以上近くで護衛ってわけにもいかないみたい。


「じゃあ行きましょうか、聖良先輩」

 嘉輪と別れると、さっそく浪岡君がそう言って私の手を掴んだ。

「え?」

「……嫌じゃなければ、今日はこのまま手を繋いでいても良いですか?」

「うっ……!」

 少し小首をかしげて申し訳なさそうに言われて、私は拒めなかった。


「い、良いよ?」

「ありがとうございます」

 そうしてまたふわりと笑顔が返ってきた。


 ドキッと、する。

 でも……。


 異性に対するものっていうより、可愛い後輩に対してって感じなんだよね……。


 浪岡君は異性として見てもらえるようにって言っていたけれど、それはちょっと難しそうだと思った。

 でも浪岡君とのデートは無難にショッピングで、お互いに丁度必要だったものを買って終わる。


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