【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……分かった」

 そうとしか答えられなかった。


「……というわけで、ちょっとくらいは欲を出しても良いですよね?」

「へ?」

 そのまま重くなりそうな空気を明るくしようとしているのか、イタズラっぽい笑みを見せる俊君。
 でも言葉の内容が少し不穏だった。

 どういうこと? と首を傾げていると、テーブルの上に出していた右手を掴まれて、持ち上げられる。


 あ、何か嫌な予感。


 そう思ったときには、私の指先に彼の唇が触れていた。

「⁉」

 チュッとリップ音を立てられ、恥ずかしさで固まる。


 唇を離してニッコリ笑った俊君は、優しい声で意地悪なことを口にする。

「聖良先輩が一人を決めるまでは、ちょっかいくらい出させてくださいね?」

「え? ええ?」

「聖良先輩が本気で嫌がることはしませんから。せいぜいこうして恥ずかしがってもらうだけです」

「なっ⁉」


 これは、開き直ったってことなのかな?
 あれ? でも振り向いてはもらえないって諦めてるんだよね?

 え? 違うの?


 何だかよく分からなくなってきた。

 そうして混乱していると、また指先にチュッと唇が当たる。


「っ⁉」

「可愛いなぁ、聖良先輩。俺をフるんですから、これくらいは良いですよね?」

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