【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 楽しそうな笑みを浮かべながら確認してくる俊君に、私は何とか声を絞り出した。


「……うぅ……。そ、それは……了承、いたしかねます……」

「えー? 残念」

 おどけてそう笑った俊君の目には、わずかに悲しさが見て取れた。

***

「はぁ~……」

「まあ、予測はしていたけど。結局疲れて戻ってきたわね」


 寮に帰って、私の部屋で愛良のお土産にと買ったバウムクーヘンを取り分けて食べながら嘉輪が言った。

 なんとなく報告会みたいな感じになって、愛良だけじゃなく嘉輪と瑠希ちゃんも部屋にいる。

 一通り話し終わった私は、思い切りため息をついてしまったんだ。


「あー……お疲れ様です、聖良先輩」

 そういたわりの言葉を口にした瑠希ちゃんは、すぐに同じ口でバウムクーヘンを美味しそうに食べた。

 大変そうだなと思ってはいてくれるみたいだけれど、結局のところは他人事扱いみたいだ。


 まあ、実際そうなんだけど。


「でもまあ、少なくとも浪岡君と俊先輩は選ばないってハッキリしたんでしょう? それがちゃんと分かっただけでも収穫だったんじゃない?」

 一口食べ終えた愛良は冷静にそんなことを言う。
 愛良ってたまにシビアなんだよね……。


「……でもやっぱり心苦しさはあるし……」

 なんてうだうだ言うと。

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