【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 その先生という境界線がなければ、きっと惹かれてしまうだろうってことに。


 一応相手はもう一人いるけれど、あいつを好きになることなんてないでしょう。

 これだけ好き勝手にされて、好感情が浮かぶとは思えなかった。
 今でも湧いてくるのは怒りばかりだし。


 だから、やっぱり一番恋の相手になりそうなのが田神先生なんだ。


 やっぱり緊張してきた。


 気取られない様にはしていたけれど、さっきからソワソワしてしまっている。

 田神先生と合流したら、私どう接すれば良いんだろう。


 緊張して悩んでも、合流しないわけにもいかなくて……。


「ああ、来たな」

 そう言って顔を上げた田神先生は、以前彼の家に行ったときの様に前髪を下ろしていた。

 格好もラフな私服で、先生というより少し歳の離れたお兄さんといった雰囲気。


 私を見て微笑む彼に、自覚したからなのかいつも以上にドキリとしてしまう。

「じゃ、俺はこれで」
 引き継ぎをして忍野君が去って行き、二人きりになる。

「じゃあ行こうか、聖良」
 呼び捨てにされた名前。
 今は“先生”ではないという意思表示。

 当然の様に差し出された手に、私は少しためらいつつ自分の手を乗せた。

 男らしいごつごつした手。
 嫌でも意識してしまう。

「えっと、よろしくお願いします……」

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