【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 照れてしまうので、視線を逸らしてしまった。

 でも田神先生は見逃してはくれない様で……。


「聖良? ちゃんと俺を見てくれ」
 そう要求される。

「え? えっと、今はちょっと……」
「聖良?」

 緊張や照れが少し落ち着くまで待ってほしくて誤魔化すけど、田神先生はそんな私の顔を覗き込む。


「朝具合が悪そうだったと聞いたが、まだ良くなってないのか? 少し休むか?」

 眼鏡の奥の目が心配そうな色を見せる。

 覗き込むために(かたむ)けたからか、おろしている前髪がサラリと揺れた。


 その様が普通にカッコイイ男の人にしか見えなくて、尚更照れて言葉を詰まらせてしまう。

「っ!」

 私は今どんな表情をしているのか分からない。
 ただ、顔は赤いだろうなって思った。

 私の顔を見た田神先生は、少し驚いた様な顔をしてから嬉しそうに目を細める。

「……意識してもらえてる様で何よりだよ」

 そうして妖艶に微笑むものだから私はさらに顔が熱くなる。


 ……でも、頭の中には他の顔もチラつく。

 あいつはこんな笑い方しないよね、って考えてしまう。


 本当に、私は今どういった状態なんだろう。

 この田神先生とのデートでそれだけでも分かればいいな、と思いながら彼に手を引かれるまま歩いた。



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