【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「さて、体調が良くなったなら行きたい所があるんだが、大丈夫か?」

 体調を気遣ってくれる田神先生の優しさに、またドキドキしながら私は頷く。


「大丈夫ですよ。忍野君も気遣ってくれて映画館でグッスリ寝ちゃいましたので」

 笑いながら言うと、田神先生は「忍野に感謝かな?」と言いつつも「だが」と少し眉を寄せる。


「俺とのデートで他の男の名前をあまり出さないでくれ……嫉妬しそうだ」

「っ!」

 口調は軽めではあったけど、その言葉が本気だというのが視線で伝わってくる。

 独占欲丸出しな言葉に、私はどうして良いか分からなくなる。


 ただ、少なくとも嫌だとは思わなかった。

「も、もう! 田神先生、あまりそういうこと言わないで下さい。どうして良いか分からなくなります」

 耳まで熱くなるくらい恥ずかしい気持ちで何とか伝える。
 少しは抑えて欲しいと願いを込めて。

 でも、素で全力アピールして来ている田神先生には無理な話だったらしい。


「それは無理だろうな。お前には心からの本心を伝えようと決めているから」

 その本心が妖しくて甘過ぎるんです!


 抗議したかったけど、田神先生は目を細めて「それより」と言葉を続ける。


「先生呼びはやめてくれないか? 今は一人の男としてお前とデートしてるんだ」

「うっ……」

< 417 / 741 >

この作品をシェア

pagetop