【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 確かに、それはその通りだった。


 田神先生もその辺はちゃんと分けて私の呼び方を変えているのに、私の方だけいつも先生として見ているのはフェアじゃない気がする。


「でも、何て呼べば……」
「それはもちろん、(いつき)と呼んでくれ」
「そっ! それは……」

 いきなり名前の呼び捨てはハードルが高すぎる!


「田神さんでお願いします」
「せめて名前のさん付けにしないか?」

 と、妥協して提案されたけど……。

 斎さん?
 無理無理無理無理!

 想像しただけで恥ずかしかった。

「やっぱり田神さんでお願いします……」

 恥ずかし過ぎてちょっと涙目になってしまった。

 すると田神先生……じゃなくて、田神さんは口を押さえて私から視線を逸らした。


「? 田神せ……田神さん?」
「……いや、そういう顔はかなりヤバいなと思って……」
「ヤバい?」

 何が?


 聞き返すけど、それに対する答えは無かった。

 ゴホン、と咳ばらいをして田神さんは「行こうか」とまた私の手を引いて歩き出す。

 私は首を傾げ考えつつも、結局ヤバい顔というのがどんなものなのかなんて分からなかった。



 そうして連れて来られたのはデパートの屋上。

 そこは見事な庭園になっていた。


「わぁ……」

 ガーベラ、サザンカ、ダリア。
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