【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 先生じゃなくて一人の男性として見てみると、やっぱり予感した通り恋の相手になりそうだと思った。

 ただ、それでも彼はまだ“先生”だから……。

 だから、やっぱりブレーキがかかる。
 その恋を芽吹かせることが出来ない。

 しかも……。

 さっきから田神さんの行動で胸がときめくたびに、記憶の片隅からチラついてくるムカつく笑顔。

 どうして記憶だけの存在のくせにこうも影響力があるのか。


 本当に腹の立つ男。


 やっぱり、もう一度会うしかない。

 会って、あの腹の立つにやけ顔をぶん殴ってやるんだ。

 そうしてハッキリさせる。

 私の心が誰に向かっているのかを。


 そんな決意をしていたせいかな?
 表情が硬くなっていたみたい。

 そしてそんな私の様子を田神さんは見逃がさなかった。


「聖良? どうした? 厳しい顔をして……?」

 さっきまで癒されたといった表情をしていたのに、突然真顔になったらそりゃあ心配もするだろう。


「あ、えっと……ちょっと決意したことがあって……」

 そうして私は今考えていたことを少し彼に聞かせた。


 岸に会いたいと思う、と。
 会って、ぶん殴って、気持ちをハッキリさせたいんだって。


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