【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 つまり、様子のおかしいH生の工藤さん。
 彼女も吸血鬼に操られているということで……。


 放り投げられた私は、足をもつれさせてそのまま倒れるかと思った。

 でも、何かが私の体を受け止める。


 はじめは壁にでもぶつかったのかと思った。
 けど、それは壁と言うには柔らかくて……。

 それにその壁は腕を伸ばして私の体を抱きしめる。


「やっと来たなぁ? 聖良?」

 耳のすぐ後ろで聞こえた声は、記憶にあるあいつのもので……。

 自分の気持ちをハッキリさせるために、会わなくちゃいけないと思っていた相手で……。


 首をひねり見上げた顔は、ぶん殴ってやると決めていたニヤついた顔があった。

「き、し……?」

 どんな理由であれ会いたいと思っていた相手。

 でも、予想外に突然会ってしまったからかフリーズしてしまう。


 目を見開き、岸を見上げたまま固まってしまった私。

 そんな状態、こいつにとっては格好の餌食だったのに。


 視線の先にある黒い瞳が、獲物に食らいつこうとする凶暴な色を見せる。

 しまった!

 と思ったときには、もう奪われていた。


「あ――んぅ⁉」

 はじめから深く入り込んでくる。
 貪るように、性急に。

「やっめ……んっ」

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