【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 岸の唇から逃げようとしてひねっていた首を戻そうとすると、後頭部を掴まれ戻される。


 強引な、呼吸すらも奪おうとするかのようなキス。

 そうだった。

 そんな岸のキスは、私を翻弄(ほんろう)するんだった。


 今更思い出しても遅い。

 すでにされてしまった口づけのせいで、私は体に力が入らなくなってくる。


「っは、まって……んぅっ」

 せめて少し待ってと懇願するも、また塞がれてしまう。


 腰に回された腕が私の体を支えるためか、更に強く抱き締めた。

 そうして抵抗することも出来ずクッタリしてしまった私を見て、岸は満足そうに目を細めて笑った。


「可愛いなぁ、聖良。会いたかったぜ?」

 私が知っているにやけ顔。
 そう、この顔をぶん殴ってやりたいと思っていたんだ。

 私は怒りの力を使って無理やり身体に力を込める。


 取り敢えず、一度離れないと。

「私も、ある意味会いたかったわよ!」

 叫んでいつかのように岸の足を踏み、痛みで腕が緩んだら彼の胸を押して離れた。
 そしてすぐに殴る体勢を取ったんだけど……。


 殴るべき相手の岸は、バランスを崩した様にふらついて壁に背中を打ち付けると、そのままズルズルと座り込んでしまった。

「…………え?」


 えっと……私、足踏んだだけだよね?
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