【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 あとは少し胸を押したくらい。

 こんなふらついて倒れる様なことしてないはずだけど……?


 予想外の展開に、また私はフリーズしてしまう。

「ったく、ホントじゃじゃ馬。まあ、そこが良いんだけどな……」

 岸は座り込んだまま膝を立て、そこに腕を置いて髪をかき上げた。
 その表情は自嘲を含んだ弱々しい笑顔。

 さっきまでしていたはずの、いつものふざけたにやけ顔はどこに行ったのか。


「な、なに? ふざけてるの?」

 戸惑いながらも聞くと、「ふざけてねぇよ」と不貞腐れたような声が返ってきた。

「最近まともに血を飲めてねぇからな……力が出ねぇんだよ」

「は? ……えっと、血液パックをもらえてないってこと?」

 一応岸はお尋ねものって状態だ。
 そんな人には配給されないのかも知れない。

 そう思ったけれど何だか違うらしい。

「血液パックに関しては吸血鬼が人間を襲わないために必要なものだからな。匿名でも申請すりゃあ貰える」
「じゃあどうして……」

 聞いた話では、確かひと月以上飲めなければどんどん衰弱していくと言っていなかったっけ?
 どれくらい前からまともに飲めていないの?

 今の岸の様子を見ると、衰弱は始まっている様に見える。

 さっきは無理やりキスをしてきて、いつもの岸だと思ったけれど……。
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