【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 完全に無意識だったけれど、その呼び方にあたしの心が表れていた。

 そして、田神先生は気づいてしまった。


「俺のことは、先生としか見れないか……?」

 今度はハッキリと非難する様な声音。

 肩を掴む力が強くなる。


「っだから、あいつに会ってほしくなかったんだっ!」

「っごめ、なさい……」

 会ってハッキリさせる。
 あいつをぶん殴って、気持ちを整理するだけだと言った。

 でも、会った結果は……。


 田神先生の気持ちを裏切るようなことになってしまったのかも知れない。


 田神先生をどう思っているのか、答えは出していなかったけど……。
 それでも期待させる様な雰囲気にはなっていたと思う。

 実際あたし自身岸に再び会うまではきっと田神先生を好きになると思っていたから……。


 でも、実際に岸に会ってみたらあいつは予想外に弱っていて……。

 メンタル的にも弱っていたのか似合わない諦めの表情なんかして……。

 しまいには、奪うようなキスしかしなかったくせに優しく甘いキスをしてきて……。


 そして――。

『お前は俺の唯一だ。何が何でも手に入れっからなぁ』

 誰よりも強く、あたしを求めてきた。


 思い出しただけでゾクリと身が震える。

 正直、信じたくはないけれど。

 あたしは多分喜んでいるんだ。


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