【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 私の様子をうかがいつつ岸の名前を口にした瑠希ちゃんは、今度こそ私の言葉を待つように後は黙った。


「……」

 それでも話し出せないでいると、嘉輪が探るように聞いて来る。


「岸に、また血を吸われたの?」

「っ!」

 どうして分かったの⁉

 と一瞬思ったけれど、そう言えば傷が塞がっても匂いだとか気配みたいなものが吸血鬼には分かるんだったっけ? と思い出す。


「他にも何かされたの? 鬼塚先輩達は何をしてたの? また襲われるなんてっ!」

 質問を続けているうちに感情が(たかぶ)ってきたのか、語気が荒くなる嘉輪。

 そんな嘉輪の言葉の一つを私は強く否定する。


「襲われたわけじゃ、ないっ!」

「……え?」

「襲われたんじゃないっ。私が吸って良いって言って、飲ませたの」


「聖良?」
「お姉ちゃん?」
「え? 聖良先輩?」

 信じられないとばかりに驚く三人。


 分かってる。
 みんなからすれば岸は私を狙う悪者で、言わば敵だ。

 みんなはそんな岸から私を守ろうとしてくれてる。

 それなのに守られているはずの私が、その敵の手に自ら進んで行ってしまうようなものだ。
 信じられないと驚くのも無理はない。


 ……だから言いづらかったのだけれど……。


 でも言ってしまったからにはちゃんと伝えなくちゃ。

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