【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「え? はい。“唯一”はそのままの意味で、自分にとって唯一無二の存在って意味です。吸血鬼にとってはその人の血は誰よりも美味しく感じて、しかも少量で満足出来るらしいですよ?」

 横で嘉輪が顔色を変えているのに気づいているのかいないのか、少し楽しそうに説明してくれる瑠希ちゃん。

「吸血鬼が一生のうちに出会えるかどうかって感じなので、結構珍しいです。ほとんどが会えずに一生を終えますから」

「そう、なんだ?」

 嘉輪の様子も気になっていた私はぎこちなく返事をする。


 瑠希ちゃんの説明で何となく“唯一”っていうのが特別な存在なんだってのは分かったけど……。

 嘉輪の様子を見るに、それだけじゃない気がした。


「……嘉輪?」

 控えめに名前を呼んでどうしたのかと様子をうかがう。

 するとハッとした嘉輪は私と愛良を見て意を決したように口を開いた。


「……“唯一”はね、吸血鬼にとって本当に特別な存在なの。誰かと被ることのない、その吸血鬼にとってだけの特別な存在。運命の相手とも言えるかもしれないわね」

「運命の相手……」

 呟いたのは愛良。
 何か思うことがあるのか真剣な目をして嘉輪の言葉を聞いている。


 運命の相手。
 そう聞くと素敵なもののように聞こえるんだけど、嘉輪の表情はそんな素敵なものを語るようなものには見えない。

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