【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 しかもお尋ね者ときた。

「……多分、引き離されるのは確実だと思うわ」

「そう、だよね……」


 もしかしたら、というわずかな希望もあり得ないと否定される。

 私自身そんな希望は存在しないと何となく分かっていたけれど……。

 それでも気落ちしてしまうのは仕方がなかった。

「え? じゃあどうするんですか? 一応、岸って人と聖良先輩は両想いなんですよね? それだけじゃダメってことですか?」

「周りが認めないって……それじゃあお姉ちゃんは……」

 黙って嘉輪の説明を聞いていた二人がそれぞれ焦燥(しょうそう)を見せる。


「二人が結ばれるには、聖良が岸に付いて行って逃避行するしかないってことね」

 悲し気な笑みを浮かべながら嘉輪はそうまとめた。


 やっぱり、それしかないのか……。

 なんとなく分かってはいたけれど、自分以外の人の口から言われるとより実感してしまう。


「そんな! 逃避行って、あたし達や愛良ちゃんと会えなくなるってことですよね?」

「……お姉ちゃん」

 悲しみの声を上げる瑠希ちゃんと、寂し気な目で見てくる愛良。

 そんな二人に、私はどんな顔を見せればいいのか……。


 みんなと別れたくなんかない。


 気持ちには応えられないけれど、婚約者候補の人達にはお世話になってばかりで何も返せていない。

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