【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「えっと……。岸がね、血婚の儀式のことを隷属(れいぞく)の儀式だって言ったの。どういう意味か分かる?」

 純血種ということもあって、吸血鬼の色んなことを知っていそうな嘉輪。

 “唯一”のことも詳しかったし、このことも知ってるんだと思ったんだけれど……。

「隷属? 何それ?」

 眉を寄せていぶかしがられた。

 嘉輪が知らないことに少し驚きながら、私は詳しく話す。


「吸血鬼とハンターのしがらみは軽いものじゃないとか言っていたけれど……」

 そう伝えると、嘉輪はまた眉間にしわを寄せ硬い表情をする。

 そんな表情でも嘉輪は美人だよなぁ、なんて場違いなことを考えながら彼女の言葉を待った。


「確かに、その言い分にも一理あるわ……。今度、田神先生に聞いてみましょう? もし隷属というのが本当なら、愛良ちゃんが心配だもの」

「っ、うん……」

 田神先生の名前に顔が強張ってしまう。

 それを見た嘉輪は心配そうに提案する。


「もし田神先生と顔を合わせづらいなら私だけで聞いて来るわよ?」

「……ううん、ちゃんと聞きたい。田神先生と会うのが気まずいのと、儀式が本当はどういうものなのか知るのとは別問題だから」


 もし愛良が言いなりになるようにされるというなら、阻止しないとならないし。


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