【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 零士が愛良の髪を撫でて甘い笑顔を見せると、愛良も恥ずかしそうにだけど微笑む。

 一気に二人の世界がそこで形成された。


 ホンットブレないな、この男は。

 ある意味うらやましいよ。


「聖良、死んだ魚のような目になってるわよ?」

 私の近くにいた嘉輪がポソリとそう言ったけれど、聞こえないふりをした。

 だって、多分本当にそんな目をしてるだろうなって思っちゃったから。


「……聖良」

 低い声が、私を呼ぶ。

「っ!」

 思わず肩をビクリと震わせ、ゆっくり声の主を見た。


 冷たく感じるほどの瞳と目が合い、また肩を震わせる。

「……言っておくが、俺はお前を諦めてない」

「っ……え?」

 一瞬何を言われたのか分からなかった。

 妖艶でありながらも、優しい眼差しで好きだと言ってくれていた人と同じとは思えない。

 冷たく、獲物を捕捉するような目。

 そんな目で、諦めない……まだ好きなのだと言う。

 違い過ぎて、少し怖かった。


「他の連中もそうだと思うぞ?」

「え?」

 突然他の人――婚約者候補の人達のことを言われてさらに理解が追いつかない。


 でも田神先生は私の理解が追いつく前にドアの方へ顔を向けた。

「入ってきていいぞ」

「え……?」

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