【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 田神先生の言葉の後、すぐにドアが開き婚約者候補の皆が入って来る。

 みんな硬い表情や戸惑いの表情をしていた。


 岸と会ってから、みんなともまともに話をしていない。

 田神先生同様、みんなもH生の取り調べに駆り出されていたから。


 私の護衛は大体嘉輪か正輝君がしてくれていたし……。


 だから、みんなにはちゃんと私が誰を選んだのか伝えていない。

 言いづらかったってのが大きいけど……。


 でも、今の彼らの表情を見るとある程度の話は聞いているみたいだった。


 みんなが私の前に並んで、ドアがパタリと閉まる。

 緊張から、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 こうしてちゃんと会ってしまったら言わないわけにはいかない。

 私が誰を選んだのか、伝えないわけにはいかない。


 だから正直なところ、まだ会いたくなかった。

 まだ、猶予が欲しかった。


 否定されて、非難されるのは目に見えていたから……。


 でも、田神先生はそれを許してはくれなかったみたいだ。

「なかなかこうして話をする機会が取れそうにないからな。……呼んでおいたんだ」

 淡々と話す田神先生。

 感情が乗せられている感じはしないのに、非難されている気がした。


「っ!」

 喉の奥が詰まったように言葉が出てこない。

< 485 / 741 >

この作品をシェア

pagetop