【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 声が出たとしても、何を言えば良いのか分からない。


 そんな中、代表するように口を開いたのは津島先輩だった。

「えーっと、その……。聖良ちゃん、相手を決めたって聞いたんだけど……」

 そう切り出した津島先輩の視線は泳いでいて、その相手というのが誰かもう知っていると言っているようなものだった。


「……その相手があの岸って、本当か?」

 泳いでいた目が、最後だけはしっかり私を見る。

 誤魔化さないで欲しい。

 そう言われている気がした。


 私はもう一度唾を飲み込み、ゆっくりと震える唇を開く。

「……っはい」

 それしか言えなかった。


「マジかよ……」

「っ! 嘘ですよね⁉」

 額に手を当てて呟く津島先輩の後に、浪岡君が叫ぶ。


「正直、僕を見てもらえるように頑張ると言いつつ選んではもらえないんじゃないかって思ってました。……きっと、僕以外を選ぶんだろうなって……でも!」

 うつ向き、震えるように話し出した彼は睨むように私を見た。

「何でよりによってあいつなんですか⁉ 僕達はあいつからあなたを守ろうと必死になってるっていうのに!」

「っ!」


 ストレートなその言葉は、私の胸に深く突き刺さった。


 言われると思っていた言葉。

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