【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 分かっていたけれど……ううん、分かっていて……それでも覚悟を決めていなかったからこそ突き刺さる。


 今まで守って貰って、助けてもらっていたから、岸のことを伝えるのが怖かった。

 彼らが忙しいのをいいことに、覚悟を決めるのでさえ後回しにしていた。


「そう、ですよ……いくら何でもこれは……俺達に対しての裏切りだ……」

「っ!」

 続く俊君の言葉。

 それも、言われるかもしれないと思っていたこと。

 でも、言われたら一番辛いだろうなと思っていたこと。


 実際、息が出来なくなるくらい突き刺さった。

「ちょっ、お前ら少し落ち着け。一回出よう」

 津島先輩が気を使って二人を部屋から出してくれる。


「……香月……」

 シンとなった部屋で呟くように私を呼んだのは忍野君だ。

 私が選んだ相手を応援は出来ないけれど、文句は言わないと言っていた彼。


 でも、流石に相手が岸だとそうもいかないだろう。

 だって、忍野君は岸に思い切り蹴られてたし……。


 でも彼は私を非難することもなく、ただ心配そうに見つめてくる。

 申し訳ないという気持ちはあったけれど、それ以上何も言わない忍野君にホッとした。


「……よりにもよって、岸か……」

 そして、普段でさえあまりしゃべらない石井君がボソリと呟く。

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