【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それ以上何かを言うわけじゃなかったけれど、良く思っていないことだけは確かだった。


「……分かっただろう? 君が選んだ相手は誰も認めない。俺や彼らだけじゃない。学園の関係者はみんな認めない」

 淡々と、でもハッキリと田神先生が言う。


 分かっただろう?

 言われなくてもそんなこと分かってる。

 こんな、思い知らせるようなことされなくても分かってる。


 なのにこんな風にみんなを呼ぶなんて……私の自業自得だけれど、流石にちょっと酷いと思う。

 申し訳なさと恨めしい気持ちが入り混じった状態でうつ向くと、今度は思いがけないところから声が上がった。


「ぶっちゃけ俺にはどうでも良いけど……そいつはその岸って奴の“唯一”なんだろ? それなら周りがどうこう言う問題じゃなくねぇ?」

「は?」
「え? “唯一”⁉」
「な、に?」

 零士の言葉に、石井君、忍野君、田神先生と順番に驚きの声が上がる。


 そういえば、そのことは特に伝えていなかった。

 零士は愛良に聞いたのかな?


 でもみんなのこの反応は……。


 吸血鬼が自分の“唯一”を見つけるのは珍しいとは聞いた。

 でも、ここまで驚くほどのことなのかな?

 三人の表情はただ驚くというより、驚愕という言葉が合いそうなほどだ。


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