【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「吸血鬼は無意識でも常に“唯一”を求める存在。常にその存在に恋い焦がれる」

 今まで様子を見ていた嘉輪がそう語りだす。

「だから、“唯一”を見つけた吸血鬼の邪魔をすることは基本的に許されない。それはいずれ自分に返ってくるかもしれないことだから」

 そして、私と目を合わせて嘉輪はフッと笑う。


「昔の有名なハンターの言葉があるわ」

「え?」

「『吸血鬼は、愛のために生きる化け物だ』って。“唯一”を見つけた吸血鬼は、気が狂うほどに愛し尽くすから」

「愛のために生きる、化け物……」

 言いえて妙とはこのことだろうか。

 嘉輪の話を聞いた限りでは、確かにその通りのように思えた。


「愛良に言われて気づいたが、俺の“唯一”は愛良だ」

「っ!」

 その零士の言葉に一番に反応したのは石井君。

 愛良への未練――というほどのものではないだろうけれど、やっぱり気になるみたいだ。


「だから分かるんだよ。気が狂うほどに愛し尽くすって意味が。……その岸って吸血鬼、聖良を失ったら何しでかすか分かんねぇぞ?」

 だからつべこべ言わずに身を引いて好きにさせろ、と言い捨てた。


 まさか零士から助けの言葉が出てくるとは思わなくて、目を見開いて凝視する。

 そんな私と目が合うと、零士は嫌そうに顔を歪ませてそっぽを向く。


 ……イラッ

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