【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「ここまで来たなら中に入っても変わらないだろう?」

「それなら逆にここで待ってても大丈夫だろう?」

「お前……」

 言い返されて気色ばむ石井君を見て私は「大丈夫だよ」と彼をなだめた。


「鬼塚先輩が私に何かするとは思えないし……」

 それに、連れてきてくれたH生の男子生徒もどちらかと言うと肯定派の人だ。

 私のことを裏切り者だと言った生徒に対して「好きになったものは仕方ないだろ? 裏切り者は言い過ぎだ」って言ってくれていたのを見たことがある。


「それにドアの前にいるなら何かあったらすぐ分かるでしょ?」

 V生の石井君には話しづらい内容なのかもしれないし、と思いながらそう言うと石井君は渋々納得してくれた。


「……何かあったらすぐに呼ぶんだぞ?」

「もう、大げさだなぁ」

 そんなやり取りをして私は畳教室の中に入った。


 入ってすぐに鬼塚先輩の姿が見える。

「鬼塚先輩、どうしたんですか? 突然呼び出すなんて」

 そう言って数歩進むと、後ろの方で石井君の「うっ!」といううめき声が聞こえドアが勢いよく閉じられた。

「え?」

 思わず後ろを見ると、そこには複数人のH生と見られる男子生徒。

 中には例の私のことを良く思っていないH生もいる。


 その姿とこの状況。
 嫌な予感しかしない。


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