【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「石井君! 大丈夫なの⁉ 石井君⁉」

 助けが必要な状態だと判断してすぐに叫ぶ。

 でも反応はない。


 やっぱりさっきのうめき声は聞き間違いじゃないんだ。


 声も聞こえないということは意識がない状態なのかもしれない。

 血の気が引く思いがした。


 本気でマズイかもしれない。

 裏切り者だと言って殴られるんだろうか?

 それとも岸には会わせないとどこかに閉じ込められるんだろうか?

 何にしても良い状況にはなる気がしない。


「っ! 鬼塚先輩!」

 望みは薄かったけど、この中で一番助けになりそうな人の名前を呼ぶ。

 そうして見た鬼塚先輩は無表情だった。


「っ!」

 瞬時に助けにならないと察する。


 鬼塚先輩も彼らに協力しているってこと?


 分からないけれど、頼れないことだけは確か。

 どうやって逃げようかと周囲を見回すけれど出入口は一つだけだ。

 窓もあるけれどここは三階。流石に無謀だった。

 そうしているうちに二人がかりで両腕を掴まれてしまう。

「やっ! 離して!」

「うるせぇ! 大人しくしやがれ!」

「っ!」

 脅すような怒声に、怖くてビクリと震える。

 そうして怯んでしまった隙を突いて、彼らは私を床に押し倒した。


「っ! いたっ……んぐぅっ!」

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