【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 仰向けに寝かされるように倒され、口に布のようなものを突っ込まれる。

 暴れたけれども、男の力には敵わず両手両足も押さえつけられてしまった。


「おい、鬼塚! 早くしろ! お前がヤるって言ったんだろ⁉ のろのろしてんなら俺がヤるぞ⁉」

「……分かってるよ」

 淡々とした声で答えた鬼塚先輩がゆっくり近づいて来る気配がした。


 何? 何なの?

 私、何をされるの?


 分からなくて今にも泣きそうな気分で視線だけを動かしていると、さっきから乱暴に叫んでいるH生が私をさげすむような目で見下ろし笑う。

「何されるのか分かんねぇって顔してるな? いいよ、教えてやる」

 そうして紡がれた言葉は私を絶望に叩き落とすものだった。


「お前を孕ませるんだよ。“花嫁”は人間の子供を孕むとその時点で血の性質が変わる。だから“花嫁”として吸血鬼に狙われることが無くなるんだ」

 感謝しろよ、とばかりにドヤ顔される。

 ……な、に?

 何を……言ってるの……?


 孕ませる?

 吸血鬼に狙われることが無くなる?


 何でそんなことするの?

 私、そんなこと望んでないのに……。


 恐怖と絶望に自然と全身が震える。

 そんな私を憐れむことすらせず彼は話を続けた。


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