【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 っちょっと待って?

 私、勘違いで孕まされそうになってるの⁉


「んんんーーー!」

「このっ暴れんな!」

 理解した途端冗談じゃないと力の限り暴れ出す。


 せめて口の布を吐き出せれば勘違いだと指摘出来るのに!


 思い切り詰め込まれたそれは、口の動きや舌だけではすぐには取れそうにない。

 暴れながら何とか訴えようとしているけれど、彼らが気づくはずはないし力の差も歴然だ。

 出来たことと言えば彼らを少し疲れさせたくらい。


 結局抑え込まれて怒鳴られてしまう。

「ふざけんなよ⁉ 大人しくしろっつってんだろ⁉ 殴られてぇのか⁉」

「っ⁉」

 暴力をほのめかされ、本能的にビクリと震え体を硬直させてしまう。


 そしてその間に鬼塚先輩が近くに来てしまった。


「ったく、おせぇぞ? 早くしろよ」

「……ああ」

 急かされた鬼塚先輩は相変わらず無表情で私に覆いかぶさってくる。


 嘘……。

 鬼塚先輩……本当に?


 嘘だと言って欲しい。

 私に空手を教えてくれたり、みんなの気持ちに応えられないという悩みを聞いてくれたり。

 先輩として尊敬出来る人だと思っていたのに……。


 本当に、こんな酷いことをしようとするの……?


 信じられなくて、信じたくなくて鬼塚先輩の目を見返す。

< 497 / 741 >

この作品をシェア

pagetop