【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 彼の真意が他にあるんじゃないかと探ろうとする。


 でも、彼の手が太ももに触れたことで何も考えられなくなった。

「っ⁉」

 やだ……嫌だ!


 ごつごつした、大きな男の手が撫で上げるように柔らかい部分に触れる。

 好きでもない相手からのその行為は、ゾワゾワと嫌悪感しか湧いてこない。


 喉の奥が引きつり、今度こそ涙が零れそうになる。


 鬼塚先輩はそのまま私の頭の横にもう片方の手を着き、顔を近づけてきた。

 そして耳元で囁く。


「聖良……好きだよ」

「っ⁉」

 何を言ってるのか理解出来ない。

 そんな私に、鬼塚先輩はもう一度言葉を詰み重ねる。

「俺はお前が好きだよ」

 その声はさっきまでの淡々としたものではなくて、僅かに熱を伴っている様にも聞こえた。


 でも、この状況で言うべきことじゃない。
 こんな状況で、その言葉を信じられるわけがなかった。


「だからさあ、聖良。……俺の子、産んでみねぇ?」

 ピシリと、自分が石みたいに固まったかと思った。


 『産んでみねぇ?』って……。

 いくら何でもその言い方はないんじゃないだろうか。


 好きだとか、その言葉が例え嘘でも本当でも続く言葉がそれ?

 言葉のチョイスが最悪過ぎて、私は恐怖が呆れと怒りに差し代わるのを感じた。


「んーーー!」

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