【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 つまり、私は以前に増して居心地の悪い学園生活を送っているというわけ。

『これは本当にもう岸って先輩と逃避行しちゃった方がいいのかもしれないですね』

 というのは瑠希ちゃんの言葉だ。

 でも確かに、それくらい居心地の悪い思いをしている。


「はぁ……嘉輪達がいなかったら登校すら出来ないよ」

 嘉輪という支えがなければ学園に来ること自体出来なかっただろう。

 理解してくれている人が近くにいるから、何とか来れているだけだ。

 でなかったら、こんな針のむしろ状態の学園になんて来れない。


「……この際無理に学園に来なくても良いんじゃない? もう少し噂が落ち着くまでとか」

 嘉輪の提案に私は「うーん」と少し考えて首を横に振る。

「ううん。来ないともっと酷くなりそうな気しかしないから」

「……そうね」

 私の言葉を否定しなかった嘉輪はため息をつきつつ周囲を見回した。

「……ん? あれって……」

 そして、教室のドアの辺りに視線を留めて声を漏らす。


「ん? どうしたの?」

 つられて私も視線を向けると。

「あ……忍野君?」

 ドアの近くでは忍野君がもの言いたげにこちらを見ていた。


 いつからいたんだろう?

 私に用事があるなら呼んでくれればいいのに。


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