【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……うん」

 忍野君の意見に同意しつつ、彼が理解を示してくれたことが嬉しかった。


 他のみんなは、相手が岸ってだけであり得ないみたいに言っていたから……。


 そして、今の話を聞いてまた岸に会いたい気持ちが増す。

 会って、ギュッと抱きしめたい衝動に駆られる。


 会いたい。

 会いたくて、会えなくて……胸が苦しい。


「そんなあいつが香月っていう“唯一”を見つけたんだ。執着するのも当然だよな」

 忍野君は諦めを(にじ)ませたほほ笑みを浮かべた。

「悔しい気持ちもあるけど……うん、俺は香月があいつを好きになって良かったと思う」

「っ! 忍野君?」


 私が誰を選んでも、応援は出来ないかもと言っていた忍野君。

 でも、文句は言わないと言ってくれていた忍野君。


 選んだ相手は岸という問題のある吸血鬼だったけれど、その言葉に偽りはなかった。

 しかも良かったとまで言ってくれた。

 裏切りとまで言われた私の恋を、認めてくれた。


「っ……聖良?」

 初めに気づいたのは嘉輪だ。

 次に、改めて私の顔を見た忍野君が息をのむ。


「あ……」

 二人の反応で、私は自分が泣いていることに気づいた。


 岸が好き。

 私のその思いを認めてくれる人は嘉輪と愛良、あとは瑠希ちゃんと正樹君。その四人だけだ。


< 514 / 741 >

この作品をシェア

pagetop