【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 津島先輩と石井君は私が岸の“唯一”だからってことで納得してくれただけ。

 そんな、ほとんどの人が認めてくれない中、忍野君はちゃんと自分の目と耳で見聞きして判断してくれた。

 良かったと、言ってくれた。

 それがとても嬉しくて、救われたんだ。


「忍野君っ……」

「あ、ああ」

「教えてくれてありがとう。……認めてくれて、ありがとう」

 涙を次々とこぼしながら、私は感謝を伝えて笑顔を見せる。


「……嬉しかった」

「っ!」

 瞬間息をのんだ忍野君は、頬を染めて私から視線をそらした。


「香月、ずりぃよ。俺のこと完全にフッてからそんな綺麗な泣き笑いするとか……」

 ブツブツと文句を言われたけれど、私だって狙って微笑んでるわけじゃない。

「ふっ……ずるいって言われても困るよ」

 忍野君の言いように今度は普通に笑う。

 つられるように嘉輪もクスリと笑い、そして厳しい眼差しをドアの方へ向けた。


「で? あなたたちはいつまで聞き耳を立てているのかしら?」

「え?」

 何を言っているんだろう?

 そう思った次の瞬間には、ドアがカチャ……と控えめな音を立てて開かれた。


 初めに入ってきたのは気まずそうな表情の石井君。

 続けて似たような顔をしている津島先輩だ。


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