【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 零士という大事な人が出来ても、私を気遣ってくれていた。


 愛良自身もお姉ちゃんっ子ってところがあるのかもしれないけれど、それでも私に合わせてくれていた部分もあると思う。


 いつも私以外が選ばれる。

 あからさまなものはそこまで多くはなかったけれど、小さな出来事は確実に私の心に溶けない雪のように積もっていった。


 私を選んでほしい。
 私を必要としてほしい。


 その気持ちに確実に応えてくれるのは家族だった。

 両親がちゃんと私と愛良をそれぞれに愛してくれていたからそう思えたんだと思う。


 それでも両親は私だけを選んでくれるわけじゃなかったから……。

 だから、愛良に固執した。

 確実に私を求めてくれる、姉思いの妹だから。


 でも、愛良は零士を選んだ。

 私を思って求めてくれるのは変わりないけれど、一番ではなくなった。


 だからと言って私と愛良の絆が切れるわけじゃないから、今でも大事に思う。

 でも、私を確実に一番に思ってくれる人がいなくなったと思ったんだ。


 私を抱く岸のシャツをギュッと掴む。

「岸……あなたは、私を求めてくれる? 一番に思ってくれる?」

 少し、声が震えた。

「こんな、気持ちが重くて、可愛げもない女でも、好きでいてくれるの?」


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