【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 まず私はものじゃないし、貸すってどういう……。


 理解出来なくて首をひねっていると、察した様子の岸が殺気とも言えそうな怒りを表した。

「テメェら……ふざけんなよ……」


 うなるように呟いた岸は、そのまま私を守るように肩を抱く。


「ふざけてないさ、本気だよ。……“花嫁”が手に入らなかった場合、その子には御当主の子を産んでもらう」

「なっ⁉」

 思ってもいなかった言葉に開いた口が塞がらない。


「大丈夫、一人産んでさえくれれば解放するさ」

 全く大丈夫なんかじゃない。

 つまりは岸以外の人とそういうことをして、子供まで産めと言ってるんでしょう?

 しかもその子供は放って岸の元へのうのうと戻れということ。


 あり得ない。

 最初から最後まであり得ない。


 いっそめまいがしてきたけれど、そんな余裕もない。


「ふざけてんだろ? 許すわけねぇだろうが」

「だから本気だと言っているだろう?」

 同じような問答に、男が空気を一変させる。

 冷たい、刺すような低い声になった。


「本気だから、下手な事はしない方がいい。岸、お前もその子を残して死にたくはないだろう?」

「っ⁉」

 その言葉に本気を感じて息を呑む。

 岸も、冗談だろなんて言って笑うこともない。


 本当に、本気なんだ……。


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