【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 ハッキリ線引きするのもある意味優しさなのかもしれない。


「……従ってもらうわよ。“花嫁”との間に強い子供が産まれさえすれば、あいつらは文句を言わないと言ったの。……それ以外に方法がないのよ!」

 シェリー自身全く納得していないようなのに、それしか方法がないという。

 これじゃあこっちだってどうしようもない。


「……でも、従うつもりがないのならどうしてあなたはここまで大人しくついて来たの?」

 少し感情を落ち着かせてから、シェリーが聞いて来る。


 それに答えようとしたけれど、先に口を開いたのは岸だった。

「そりゃあ? こいつの望み通り妹を助けるためだな」

「それであなたの“唯一”が奪われるかもしれないのに?」

「はっ! んなことさせるかよ」

 すると、シェリーは皮肉気に私達を見て笑う。

「……二兎追うものは一兎をも得ずってことわざを知らないのかしら?」

 明らかな嘲笑。

「……知ってるわよ」

 今度こそ、私が口を開く。


 知っていても、分かっていても、譲れないものがある。

 そのためにあがくことをやめたくない。


「でも、どちらも譲れないものならあがくしかないでしょう?……愛良はどこにいるの⁉」

「っ!……教えるわけないじゃない」

「じゃあ勝手に探すわ!」

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